歯垢(プラーク)に含まれる細菌は糖分やタンパク質を分解し、その分解によって排出される酸により口の中のPHが低下します。酸が歯の硬い成分(エナメル質、象牙質)を溶かすことでむし歯になります。基本的にむし歯も慢性の感染症であり、できる限り口の中の細菌数を減少させることが予防の一つになります。
むし歯の3つの要素(むし歯予防に活かしましょう)
- 1口(歯と唾液)
- 手の指紋と同じで、歯と唾液も一人一人似ているようで違うところがたくさんあります。歯の質が弱ければ強化するためには、歯の再石灰化を促進するフッ化物を利用する場合もあります。さらに、歯の洗浄作用のあるだ液の分泌を促進するため、噛む回数を増やしたり頬のマッサージを行ったりする場合もあります。先天的にエナメル質がうまく形成されない患者様、シェーグレン症候群などで唾液分泌量が少ない患者様はむし歯になるリスクが高くなります。
- 2細菌
- 細菌が酸を産生しますので、細菌数が減少すれば酸性度(PHの低下)も抑えられます。口の中は37度に保たれており細菌は2のN乗で増加していきます。1時間で1回分裂するとしても1日24時間で2の24乗=16777216個にも増殖します。常日頃のブラッシングとともに歯科医院での衛生管理で歯垢(プラーク)と歯石を除去して細菌数の減少を目指します。
- 3糖分(なぜ砂糖がリスクになるのか)
- 糖分の多い間食が増えると、細菌に与える栄養の回数と量が増えるので口の中が頻回に酸性(PH4の低い状態)になり、むし歯になりやすい状態が続きます。全身疾患の予防(特に糖尿病と高血圧症)も同じですが、規則正しい食事とバランスのとれた食生活を送ることを心がけてください。
むし歯の進行と治療方法
-
C1歯の表層のむし歯
むし歯が歯の表面にあるエナメル質という組織のみにできている段階です。歯が点状に白濁することや小さい穴になっていて見つかる場合もあります。
治療方法
この段階では
- 口腔衛生管理とフッ素塗布を行い経過観察をしていく
- むし歯ができた部分のみを削って詰め物をする
詰め物の材料は、歯科用プラスティック樹脂(レジン)です。患者様の歯の色、明るさに合わせて詰めます。
-
C2エナメル質の下にある象牙質まで到達したむし歯
むし歯がエナメル質を越えて象牙質まで達した状態です。まだ神経までは達していませんが、神経に近い部分まで進んでいる場合は、冷たいものがしみるなどの症状がでます。歯と歯の間にむし歯ができている場合は、物がよくはさまると感じることもあるかもしれません。むし歯の深さによって症状もさまざまです。
治療方法
むし歯を削り、レジンで詰めて治療できる場合と、削った後に歯の型をとり詰め物を作製して接着剤で装着する場合があります。口の中での操作が困難な場合やむし歯が深い場合には型を取る治療になります。
詰め物には金属や、歯の色や明るさに合わせた白いプラスチック樹脂、セラミック、ジルコニアなどがあります。
-
C3歯の神経、歯髄まで達したむし歯
むし歯が神経まで達して神経が細菌により感染している状態です。冷たいもの、熱いものがしみる、咬むと痛い、何もしていなくても痛みを感じる(自発痛)、など症状がはっきりしてくる場合が多いです。しかし、まれにゆっくり進行した場合など、症状なく神経まで達していることもあります。炎症と感染がさらに進む前に早めの受診をお勧めします。
治療方法
むし歯や神経の一部表層を取り除き、再石灰化や殺菌作用のある薬を使用して痛みがでないか様子を見て残りの神経を残す方法や、神経がすべて感染している場合には神経をすべて取り除き、神経が通っていた管(根管)を消毒した後、薬剤を詰める方法があります。その後土台を作り歯にかぶせ物を装着します。 かぶせ物の種類は、金属、プラスチック樹脂、セラミックス、ジルコニアなど、部位や患者様のかみ合わせや審美、細菌の付着のしにくさなどを考慮した上で様々な種類からお選びいただけます。
-
C4むし歯が進行し歯の根だけが残った状態
むし歯がさらに進行し、歯の冠の部分がなくなり根だけになった状態です。
この状態まで進行すると、歯の神経が通っていた管(根管)に感染を起こして根の先に膿をためることもあります。痛みを感じる程度は状態によります。歯茎に膨らみや、にきびのようなできものができることもあり、これは死んだ多量の細菌やこわれた組織の塊が中に溜まっている状態です。治療方法
歯の根を残せる場合は、根の治療を行い、その後かぶせ物を作ります。痛みと感染があり残すことが困難な場合は抜歯が必要です。抜歯後は、ブリッジ(橋渡しの冠)、入れ歯、インプラントなどの治療を行いかみ合わせの回復を目指します。