鎮静法は、意識がない状態の全身麻酔法とは大きく異なり、意識がある状態での方法で、基本的には筋弛緩薬(筋肉の動きを止める薬。使用すると、呼吸も止まります)を使用しないので、体の動きや反射を完全には止めません。治療中の問いかけに患者様は反応でき会話が可能な状態ですが、興奮する神経(交感神経、副交感神経のバランス)をコントロールしてリラックスした状態で歯科治療を行うことができます。歯科治療に対して極度に緊張する、歯科治療が怖い、注射針の先が怖いなどの歯科治療恐怖症の方、疾患がありあまり精神的なストレス(交感神経刺激など)をかけたくない方が対象になります。また、静脈内鎮静法では、治療中問いかけに反応していても治療後にはそのことを忘れている(前向性健忘)ことがあります。その効果自体は治療に有効な効果となりますので、その作用も使用します。鎮静法を使用するにしても、歯科治療がある程度できたということが重要であり、治療が可能であればそれが患者様のその後の歯科治療の自信につながります。回数を重ねると鎮静法なしで歯科治療を行うことができるようになっていく場合もあります。
それぞれ適応がありますので相談の上治療計画をたてていきます。
笑気吸入鎮静法について
歯科治療時には口にいろいろな器具が入ります。吸入麻酔器では口ではなく鼻で酸素と笑気を吸入することになりますので、基本的に『鼻で呼吸してください』という指示に従うことができなければ適応は難しくなります。
適応の患者様
- 歯科治療に不安や恐怖心を有する
- 全身疾患を有し、侵襲に対して予備能が少ない
- 歯科治療のストレスに起因する全身偶発症の経験者
非適応(実施困難)の患者様
- 鼻閉、口呼吸のみ
- ユニットに座れず鼻呼吸ができない
- 鼻マスクが装着できない
笑気を使用できない(禁忌)患者様
- 体内に閉鎖腔(中耳炎による中耳内圧上昇、気胸、気腫性嚢胞、腸閉塞)を有する
- 最近眼手術でガスタンポナーデを施行した
- 妊娠初期(3ヶ月以内)、妊娠中はどの時期でも当院では吸入麻酔は行いません
笑気吸入鎮静法は、体があたたまるような感じ、お酒を飲んだ時のような感じ、笑いたくなる、歯科治療の術者の指示にしたがうようになる、などの効果があります。