がんの治療中で血液の状態が不安定である、骨を強くする薬を使っている、心臓が悪くて歯科治療が怖い、糖尿病やステロイドにより感染しやすい、治療中に血圧が上昇する、血が止まりにくい、局所麻酔で心臓がどきどきする、反射が起きて血圧が低下し意識が遠のくなど、いろいろな患者様がいらっしゃいます。全身疾患と内服中の薬を把握し医科の先生と情報の交換を行い、治療計画を立てていきます。状況や全身状態によっては、大学病院や近隣の総合病院をご紹介させていただくこともありますが、少しでもお悩みを解決するお手伝いをしています。
がんの患者様
がんの薬物療法は、QOLを維持するために入院ではなく、外来通院での治療が多くなります。薬物療法中には、合併症が起きることが知られています。血小板や白血球という血液の成分が減少すると出血や感染を起こしやすくなるため、口内炎、歯肉からの出血などが起こったり、治療した歯が再度痛くなったり腫れたりする場合があります。状態により抜歯できない場合もあります。がん治療中は特に口の衛生管理が重要になってきます。日頃からどのような病気になっても、口の状態がその病気の治療を妨げない良好な状態にしておくことが、いろいろな治療をスムーズに進行させることになり、口から物を食べ続けることの支えになります。
頭頸部がん(舌がん、歯肉がん、上・中・下咽頭がん、上顎洞がん、耳下腺腫瘍など)で放射線が一定以上(およそ55Gy)顎にあたっている場合には、歯科治療が制限されます。抜歯やインプラントは顎の骨に侵襲(刺激)を加えることになり、放射線治療後に抜歯を施行してしまうと骨髄炎を発症し、痛みと炎症によりQOLが低下します。放射線療法の前にはお口の状態のチェックを行い、継続的な管理が必要になってきます。また、放射線療法施行後に抜歯は基本行わない、どうしても抜歯が必要な場合には顎に当たった放射線照射量を必ず確認して、抜歯後に骨髄炎などを起こす可能性を検討することが必要です。
心臓弁膜症(弁置換術後)、先天性心疾患の患者様
心臓弁膜症や先天性心疾患では、
- 弁の動きが良好でなく逆流がある
- 人工物(機械弁、生体弁)を心臓に入れている
- 心臓の部屋の仕切りに穴があり動脈・静脈の血液が混ざる
などの状態になっています。歯科治療のなかでも歯石除去(クリーニング)や抜歯時には出血するため、微細な血管を通して菌血症(口の中の細菌が血流にのって全身に巡る)を起こしています。細菌が血流にのって心臓に到達し、流れが悪くなっているところ(特に弁)に付着してとどまってしまうと、感染性心内膜炎という重篤な病気になってしまいます。感染性心内膜炎予防のためには、細菌が血流にのる前に、特定の薬(抗菌薬)を効かせる必要があります。当院では感染性心内膜炎の予防に留意し、医科の先生と連携を行います。心臓のご病気のある患者様にはまず心臓の状態を把握してから歯科処置を行うようにいたします。そのため、当院では初診当日には口の診査と画像診断、医科への情報提供書作成等を行います。