薬剤関連顎骨壊死の病態と管理: ポジションペーパー2023を踏まえて
- 2023年7月20日
- 全身疾患
薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:
ポジションペーパー2023を踏まえて
顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023をネット検索を行い見ることができます。これはポジションペーパーでありガイドライン(正式な方針、指導など)ではありませんので参考意見となります。主に骨粗鬆症の薬(ビスフォスフォネート、抗RANKL抗体)・がん骨転移などで骨を強くする薬(骨粗鬆症薬の量と投与方法が異なる場合が多い)・リウマチなど免疫抑制剤(メトトレキサートなど)・透析中などの患者様が抜歯することや、口腔内の不衛生により発症する骨露出、それに継続する感染などの症状が継続する(8週間以上)のが薬剤関連顎骨壊死になります。骨粗鬆症の患者様が本院でも多くいらっしゃいますので骨粗鬆症の患者様へ1例として留意すべきこととして述べさせていただきます。がんの骨転移、あるいは骨粗鬆症の他に重篤な疾患がある場合には内容が少し変更すると思いますが基本的なものは変わりません。
患者様が留意すべきこと
○骨粗鬆症の薬など使用開始前に感染している悪い状態の歯の抜歯を行い侵襲的治療は終わらせておくのが理想となっています。できるだけ良い状態の歯だけを残し、グラグラの歯、根に大きな感染・膿のある歯は抜歯した方が顎骨壊死発症のリスクが減少する場合が多いと思われます。口の中を理想的な状態にすることは患者様、内科、歯科にとって安心材料となります。できれば毎月の清掃、歯石除去で維持できるところまで口を整えたいとは思っていますが、薬の投与に緊急を要する場合はそれが困難になります。普段からの口腔管理が重要になります。
○骨粗鬆症の薬など使用中に抜歯、インプラントを行う場合には内科主治医と連携をとり歯科医師は歯科治療を行います。そのため、患者様もお薬手帳などで情報を歯科担当へ伝えましょう。現段階では抜歯、インプラントの際に骨粗鬆薬を休薬するメリット、デメリットのエビデンスはありません。しかし、抜歯後に注意深く経過観察する必要があります。口腔衛生管理が必要になります。
○薬剤関連顎骨壊死は難治性の病気で治りにくいと考えられていました。2023年ポジションペーパーでは外科治療を行うことで治癒する可能性は高くなっています。治癒する病気という考えに変わっています。しかし、再発する可能性はあります。顎骨壊死の部位を除去するために顎を一部分切るなど大きな手術になる可能性もある場合もあります。顎骨壊死は骨粗鬆症の治療による合併症の治療になるため、薬投与前から抜歯して感染源をとり、いつも口を良い状態にしていれば発症しなかった可能性があるのに、という思いが患者様、医師両方に出てくることは否めません。
治癒する病気であるとは述べてありますが、やはり薬剤性顎骨壊死にならない方が良いはずです。かかりつけ歯科には骨の薬や新しい薬を投与する場合にはお薬手帳を歯科担当へ渡していただく、情報をいただくなどお願いします。また、歯周病や虫歯は口の感染症のため感染が重篤化する部位などは骨が感染し薬剤関連顎骨壊死と感染が起こりやすくなります。抜歯なども検討するか、根の治療や口腔衛生管理(歯石除去やブラッシングなど)で保存できるか判断する必要があります。また骨粗鬆症薬を投与開始した後は、何年も投与するため、ピンポイントではなく継続した日々の口の管理が必要になってきます。
かかりつけ歯科の役目が重要になってきます。