がんと骨修飾薬
がんと骨修飾薬
高齢社会になり、がんに二人に一人が罹患する病気になりました。昔はがんになったらあと何年生きられるかどうか、という不治の病でした。しかし今は5年生存率も延長し、前立腺がんや乳がんでは90%以上となっています。
5年生存率の延長に伴い、取りきれていないがん細胞など数年後に転移が起きる場合もあります。骨に転移した場合には、がん骨転移による骨折を防ぐことが重要になります。骨折など起こり動けなくなると寝たきりになる可能性も高く、このような状態をがんロコモテイブシンドローム(がんロコモ)と言われます。がん患者さんにとってがんロコモを防ぐことはQOL(生活の質)の維持に非常に重要となります。
がんの骨転移に対しては、通常のがんと同じく手術、薬物、放射線と3つの方法がありますが、歯科と関係が強いのは薬物療法で骨修飾薬を使う場合になります。骨修飾薬とは、いわゆる骨を強くする薬ですが、ビスフォスフォネート製剤、抗ランクル抗体(デノスマブ)があります。がんの場合には骨粗鬆症と比べて使用量も多く注射による投与の適応が多くなりますのでお薬手帳には載っていない場合があります。
なぜ歯科と関係するのか?
骨を強くする薬は骨を吸収する細胞(破骨細胞)を殺すか、機能を止めます。そのため骨が吸収されずどんどん作られて蓄積していきます。骨が蓄積するので疎になっていた骨が密になり結果として骨量が多くなり骨が強くなります。

では口の中を見てみましょう。口の中は細菌だらけです。骨が口の中に露出して細菌に感染する、さらに破骨細胞が働かなくなりと細菌に感染した骨がどんどん蓄積します。感染したものは排膿や炎症を起こすので口の中に膿の匂いがして食事が美味しくないという、QOLの低下が起こってきます。この症状は顎骨壊死と呼ばれます。細菌感染した顎の骨の蓄積により起こりますので予防のためには常日頃から細菌を少なくして口の中を良い状態にしておくことが必要になります。つまり歯周病や親知らずなど細菌が蓄積するところに顎骨壊死は起こってきます。

また骨転移をしやすく、生存率が高いがんの患者様が顎骨壊死に罹患する可能性が高くなります(表1)。
表1. 骨転移しやすいがんと5年相対生存率

がん患者さんのQOLの維持には、歩いて移動できること、食事を美味しくできること、両方重要な点になります。そのため骨修飾薬も使って骨折も予防しなければならないし、顎骨壊死も防ぎたい、となります。
基本口の中の状態が良好であれば細菌感染のリスクが下がり、顎骨壊死は起こりにくいと考えられます。骨修飾薬を使用する、しないに関わらず、常日頃から口腔衛生管理を行い、口をできるだけ良好な状態に保ことが必要になります。