オーダーメイド歯科治療

AIはおそらく完璧な歯科治療を提案することは可能ですが、ファジーな部分やこの治療を行ったらどのような感情が生まれて、それをどう処理するかまではできないと思いますが、どうでしょうか。もしかしたら感情もうまくAIで処理できるかもしれません。一度レントゲンと口の写真、全身状態、患者さんの性格を読み取らせてどんな治療計画を立案するか見てみたいと思っています。そんな治療計画立案ソフトはできるのでしょうか？

歯科治療は、若くて体力のある患者様にはいろんな治療の選択肢から選んで積極的に何回もかけて行うことも可能ですが、疾患がある患者さんにはQOL（生活の質）を上げる、少なくとも下げない治療、管理を行うことが重要になります。基本的に口腔管理を行うことになるのですが、多少小さい虫歯や軽度の歯周病があったとしてもそのリスクを理解して（虫歯が進行する可能性ありなど）患者様が満足していればそれでも構わないはずです。いつも迷うのですが、どこまで何を行えば良いか、患者さんの満足が得られているのか気になります。また、必ずしも私費の治療を行うことが患者さんの満足につながるわけではありません。保険の治療でも、入れ歯で少し噛めてご飯が以前より美味しく食べることができればそれはある程度の正解になると思います。審美が回復して口を開けて笑えるようになった、前歯の着色が取れて笑顔が素敵になったというようなことは歯石除去や歯面研磨など保険治療で可能です。

　重度の病気に罹患したとき（例えば、がんの骨転移など）は、その治療を行うときに口の状態が、その病気の治療を邪魔しない程度に管理することが必要です。がんの骨転移の時には骨を強くする薬を注射することがありますが、その場合には口の状態が悪い（正確には歯周病や虫歯で細菌感染が重度である場合）時は顎骨壊死と言って口の中に腐骨が出てきて、それが感染すると膿も溜まり、時には痛みも出て咀嚼できなくなり食事が美味しくなくなります。QOLの低下が起こるので、このような合併症は避けたいということになります。顎骨壊死の予防のためには、保存できない歯は抜歯しなければいけないし、継続的に口腔衛生状態をある程度良好に保つ必要があります。

心臓の弁膜症や弁置換後の患者さんには口の細菌が弁につかないように口の状態を良好に保つ必要があります。もし弁や機械弁などに口の細菌がついて増殖すると感染性心内膜炎という重度な病気になってしまいます。そのようにならないように管理する、もし感染が重度であればその感染源の除去のために抜歯も検討する必要があります。

 

 

実は人間の体は細菌だらけです。

体内には正常時から数百種類の細菌が存在し、その数は数兆にも上ります。それらの細菌の多くは口の領域に存在します。

細菌が多く存在する場所は？

　皮膚や歯の表面

　歯と歯茎の間

　鼻、鼻腔、のど、腸、膣の内側の粘膜

 

 

 

ただ大量に細菌は存在しますが、それらは嫌気性菌で酸素を必要としません。嫌気性菌は通常病気は引き起こさないと考えられており、食べ物の消化を助けるなど有用な場合が多いですが

なぜ、歯周病などに罹患するのでしょうか？外傷、粘膜損傷などにより防御機能が備わってない場合などは嫌気性菌によっても感染し病気になります。また全身に血流を介して菌血症になり先ほどの弁膜症のように弁に付着すると感染性心内膜炎を起こします。歯肉はいつも粘膜損傷が起こっているため口の中は基本的に細菌と炎症ばかりになります。ではどんな細菌が悪さをするのか？

歯周病は噛み合わせなどで揺れて（外傷性）骨が吸収して無くなる場合も多くありますが、細菌感染に注目します。

 

 

これはDH国家試験では知ってもらいたいRed Complexという重度の歯周病に関与する細菌３種類を表したものです。この赤で囲まれた３つは覚えましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この３つが悪者というわけです。

Red complexは重度歯周病の原因

　３種類の主要細菌

　Porphyromonas gingivalis（PG菌）

       偏性嫌気性グラム陰性桿菌

       溶血性、血液寒天培地で黒色コロニー

　Tannerella forsythensis（タンネレラフォーサイセンシス）

       偏性嫌気性グラム陰性菌。紡錘状。

　　　　　　タンパク質分解酵素や毒素をだす。

　Treponema denticola（トレポネーマデンテイコーラ）

        偏性嫌気性グラム陰性菌。長いらせん状。

　　　　　　　スピロヘータの一種。

　全て偏性嫌気性グラム陰性菌です。歯周ポケットが深くなって酸素が届かないところにいる細菌なので嫌気性になります。

いろんな細菌が人間の体にはいます。