健康増進法
健康増進法
理系なので法律は知らなくても良いと昔は思っていましたが、百三万円の壁など色々議論されていますので法律の内容を理解することは重要だと感じています。私たちは、私たちが投票によって選出した方(いわゆる政治家など)によって安心して暮らせる社会を作っていくために法律が作られ、それらに基づいて国民は行動していきます。
今回は健康増進法を見てみました。
歯科に関わる内容はあるのでしょうか。
平成十四年法律第百三号
健康増進法
第一条には目的として、社会変化(主に高齢化)に対応して国民保健の向上を図りましょう
第二条には国民の責務として、自分の健康状態を理解し健康の増進に努めましょう
と要約すると記載されています。
この目的のために健康増進事業として以下の4つの事業が挙げられています。
- 歯周病疾患検診
- 骨粗しょう症検診
- 肝炎ウイルス検診
- がん検診
ここで注目すべきは歯周病と骨粗しょう症の検診事業があることです。実はこの2つの疾患は骨粗しょう症の薬の合併症のために関係があります。
骨粗しょう症の薬の中で主にビスフォスフォネート製剤とデノスマブ(抗RANKL抗体)と呼ばれるものが顎骨壊死(以前のブログ、骨粗鬆症、に記載あり。症状は骨が口の中に露出して感染し、顎の痺れや排膿が起こりその症状が難治性であること)を引き起こすという報告があるからです。特に抜歯などの侵襲的歯科治療を行うと骨が露出し起こりやすくなると思われており、歯科医療が制限されると考えがちです。ただ、顎骨壊死は抜歯などの侵襲的治療より口腔内の不衛生状態、感染が関わっていると現在は考えられています(2023年顎骨壊死ポジションペーパー参照)。口の中、主に歯周病がコントロールされていれば顎骨壊死のリスクも減少するので骨粗しょう症の薬もそれなりに安心して使用できることになります。
簡単に書くと歯周病も進行していて口の中に感染があり、骨粗しょう症もあり、骨粗しょう症薬を使うと顎骨壊死になりやすい、となり病気が病気を生むことになってしまいます。
健康増進法に記載されているように、自分の健康状態を把握して、歯周病と骨粗しょう症どちらかでもコントロールして予防すれば顎骨壊死は起こりにくくなります。歯科からはできるだけ歯周病が重症にならないように口を管理していくことが必要となります。骨粗しょう症薬を使う前から口の衛生状態を良好に保ことが重要で長い間放置して歯がグラグラになっている、そして骨密度が低下したから整形外科の先生から骨粗しょう症の薬を使うので顎骨壊死が起こらないようになんとかしてほしい、ということになるとグラグラの歯を全部抜歯したりすることになる可能性があります。第二条に記載されているように、ご自身の健康状態を常に理解することは必要です。
DH国家試験に関わる問題
健康増進法に基づく事業はどれか。2つ選べ。
a. 特殊健康診査
b. 歯周疾患検診
c. 生活機能評価
d. 骨粗しょう症検診
基本的には検診事業なので『検診』という言葉がついているものを選びます。