局所麻酔
局所麻酔と歯科処置
局所麻酔についてです。歯科衛生士さんの局所麻酔(浸潤麻酔)の実施については教育を受け、技術を習得しその能力が十分あると判断された場合には、歯科医師の監督下で浸潤麻酔を実施できると現在は解釈されています。責任は全て歯科医師に帰することになります。
もちろん歯科衛生士国家試験でも局所麻酔の問題は出題されているので最低限知識が必要になります。
麻酔の発見は本当に偉大だと思います。特に一般歯科治療は痛みのコントロールが重要で毎日小手術の連続です。歯を少し削るだけでも痛みは出ますし、根の中の治療をして神経を除去する場合には麻酔がなければ激痛で拷問になってしまいます。歯周病の治療で歯肉を切るのにも麻酔なしでは何もできません。痛くないようにするだけでも技術と薬が必要です。私たちは今までの医療の発展の恩恵を受けています。
それでは局所麻酔がなぜ痛みを抑えることができるのか。
痛みを伝える神経というものが人間の体にはあります。神経細胞の周りは電解質(Na, K, Ca, Clなど)で満たされています。神経の見た目は繊維のようなものですが、痛みや刺激があると電解質の主にNa+が神経細胞の中に流入して活動電位というものが発生します(図1)。その電気シグナルの波が脳に届くと痛いと人間は感じます。これは生理学ですが、この電気波形が発生することが痛み刺激の伝達には重要です。
図1
では痛くないようにするにはどうすれば良いか。それは痛みの刺激をなくすか、この電気波形を発生しないようにすることになります。局所麻酔薬はこの電気波形を発生しないようにする薬になります。先ほど主にNa+の細胞内流入でこの活動電位が起こると説明しましたのでNa+の流入を抑えることで痛みが伝わらなくなります。Na+チャネルブロッカーと言います。
歯科での局所麻酔の種類
1.リドカイン
2.プロピトカイン
3.メピバカイン
この3種類あります。どこの歯科医院でも常備しているのは1.リドカインだと思います(販売商品名は違うので成分を見て確認しましょう。リドカインカートリッジという名前では売っていません)。1.リドカインと2.プロピトカインは血管拡張の作用があるので、出血のコントロールと局所麻酔の局所貯留を促進し長い時間奏功させるために血管収縮薬が入っています。血管収縮薬は1ではエピネフリン(アドレナリン)、2ではフェリプレシン(オクタプレシン)というものが入っています。3.メピバカインは局所麻酔そのものに血管収縮の作用があります。他の成分は含有されていません。
1.エピネフリン(アドレナリン)含有リドカイン
2.フェリプレシン(オクタプレシン)含有プロピトカイン
3.メピバカイン
エピネフリン(アドレナリン)の作用を思い出してください。救急蘇生の時に使用します。末梢血管収縮と心機能亢進になります。心臓が停止した時に再度心臓が拍動するように血液を心臓に戻して拍出する血液を増やします。また、心臓の筋肉を刺激して拍動を促します。局所麻酔に含有されているエピネフリン(アドレナリン)は少量ですが時々患者様で局所麻酔した後に心臓がバクバクするという方もいます。もちろん局所麻酔を打った時に痛いと交感神経が刺激されて心拍数が上昇します。これらはアレルギー反応ではないので混同しないようにしましょう。基本はアドレナリン禁忌の方にはエピネフリン(アドレナリン)含有リドカインは使用しないというように薬に対する生体の反応で使い分けます。
以下カートリッジの頭の色で薬剤が判断できます(以下写真参照)。
銀 エピネフリン(アドレナリン)含有リドカイン
金 メピバカイン
緑 フェリプレシン(オクタプレシン)含有プロピトカイン