歯科としてできること
- 2025年5月6日
- お知らせ
患者様が亡くなった、とご報告を受ける時があります。体の状態が悪いのに亡くなる1−2ヶ月前まで定期的に来ていただいて、私たちが本当にその方の人生のQOLに貢献できたのかいつも考えてしまいます。歯の痛みを取り除けたのか?食べ物を支障なく食べることができたのか?など。医療は患者様のためにあるので最終的には、人生最期にどんな理由であろうと幸せだった、楽になったと感じてもらうことが必要だと思います。しかし、本当のところは私たちにはわかりません
私たちと関わって良かったのでしょうか?
苦しい治療だったのでしょうか?
少しは役に立てたのでしょうか?
私たちは歯科医学を学び、いろんな臨床経験を通して歯科治療を提供しますが、いつも治療が患者様のためになっているのか悩み続けています。口も体も患者様自身のものであり、医療はどうありたいかをサポートするものにすぎません。特に歯科は、医科・救命救急のように命を助けるという大前提は少ないので患者様自身の意見を取り入れ治療方針を決定することが多くなります。保険と私費の選択などはその特徴がよく表れています。
最低限必要なこと
色々なことを考えると、必要なことはブラッシングできる能力を身につけること、それをどこまで維持するかではないでしょうか。ブラッシングさえできていれば虫歯と歯周病のリスクは軽減します。虫歯にならなければ歯を削る必要もありませんし、歯周病も重症にならなければ抜歯することもありません。ただ噛み合わせである部分だけ強く噛んだりして歯が揺れたり割れてくる場合があります。これはブラッシングでは改善しません。ブラッシングができている場合には噛み合わせ(歯並び)の問題(咬合性外傷といいます)が歯周病や歯を失う大きな問題となってきます。
治療してある程度口の中が整うようになると、その後のメンテナンスが重要になります。良い入れ歯を入れたり、インプラントを入れたりしても周りの歯が悪くなったりすればすぐに噛めなくなるし、インプラントがぐらついたり取れてしまってはどうしようもありません。治療を行ったらその状態をできるだけ維持する、さらに歯と歯周組織(歯肉や骨)の状態を良好にすることが必要だと思います。そのためには自分自身でできる日々のブラッシングが重要になります。入れ歯やインプラントなどの人工物はブラッシングをしながら慣らして使用してくことになります。
ブラッシングができなくなった時
問題はブラッシングがどうしてもできなくなった時どうすれば良いかということになります。手足が動かなくなった時、移動困難になった時など。現在は訪問診療という手段がありますが、それも月に1回−2回程度ですので、普段のケアをする人材の確保が必要となってきます。ケアをする方も自分自身のブラッシングはしますので、その方もどこかの時点で適切なブラッシング方法を知っていると歯科の訪問診療ではチェックと歯石とりだけできれば良いのかもしれません。とにかくできるだけ多くのいろんな方に適切なブラッシング方法を知ってもらうことで口腔衛生状態は変化していく気がします。
少しでもQ O Lを維持できる歯科治療を提供できればと思います。